展示会レポート|HANNOVER MESSE 2026 の注目テーマ

Interact Analysis

19 May 2026

HANNOVER MESSEは、再び明確な方向性を取り戻しつつあるように見受けられる。それは、過去の規模へ回帰することによってではなく、より限定され、かつ明確な産業上の優先課題へ焦点を絞ることによって実現されている。

2026年の最大の変化は、幅広く探索的なイノベーション展示から、実行可能性を重視したユースケース中心の展示へ移行した点にある。これらのユースケースは、実際の導入効果や運用インパクトとの結び付きが従来以上に明確であった。

展示会メモ|HANNOVER MESSE 2026で見えた主要テーマ

HANNOVER MESSEは方向性を取り戻したのか?

近年、展示領域が従来の産業オートメーションの枠を超えて拡大するにつれ、HANNOVER MESSEはやや焦点を欠いているように見える場面もあった。しかし、今年の展示内容からは、より明確な方向性が形成されつつあることが確認できた。

産業AI、デジタル化、エネルギーインフラは、多くのサプライヤーの展示ブースにおいて継続的に取り上げられており、閉ループ型の生産最適化など、共通するユースケースも複数確認された。各社の展示は明らかに実用途に根差した内容へ収束しており、例えばAIを活用して機械パラメータをリアルタイムに調整するデモンストレーションなどが代表例である。

これは過去数年間との明確な変化を示している。以前のユースケースは、より分散的かつ探索的であり、具体的な運用課題よりも「技術ありき」の印象を与えるものも少なくなかった。

来場者数は依然としてコロナ前の水準には回復しておらず、現在は約13万~14万人規模で推移している。かつては20万人を超えていたことを踏まえると、今回の変化の本質は「規模の回復」ではなく、「展示会としての再定位」にあると言える。

今年、展示会の議論を形づくった6つの主要テーマ

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1. 産業AIは熱狂から実行へ

展示会メモ|HANNOVER MESSE 2026で見えた主要テーマ

注:Siemensの「Eigen Engineering Agent」は、制御ロジックを自動生成し、オートメーションシステムと直接連携することで、エンジニアリング工数の削減とAIの現場実装を推進している。

産業AIは、従来の副操縦士型ツール、分析支援、提案型アプリケーションの段階から、機械、プロセス、実運用を直接制御するフェーズへ移行しつつある。

Siemensは、AIが生産パラメータをリアルタイムで調整する閉ループ型プロセス最適化を展示した。また、「Eigen Engineering Agent」はTIA Portal向けにPLCロジックを自動生成できる。展示会全体の議論からも、AI活用が「シミュレーション」から「実行」へ移行していることが明確に読み取れた。

これは本質的な転換点である。産業AIはもはや運用システムの上位レイヤーに存在する支援ツールではなく、制御ループそのものへ組み込まれ始めている。

同時に、エージェント型AIの台頭も大きなテーマとなった。複数のサプライヤーが、制御ロジックを自律生成し、産業システムと相互作用しながら、一定条件下でタスクを実行する初期的なAIエージェントを紹介していた。AIは意思決定を補助する段階を超え、実行主体として機能し始めている。

2. ヒューマノイドロボット:成熟度は低いが、存在感は予想以上に高い

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注:ヒューマノイドロボットの製造業・倉庫分野での導入は急速な拡大が見込まれており、2030年までに1,000倍超の成長が予測される。一方、その他産業への普及は相対的に緩やかである。出典:Interact Analysis『Humanoid Robots 2026 Market Report』。

HANNOVER MESSEにおけるヒューマノイドロボットの存在感は非常に強く、LogiMATやMODEXにおける限定的な展示とは対照的であった。これは、IT主導型の産業展示会が、既に実用化されたソリューションよりも、将来的なポジショニングや先端イノベーションを重視する傾向を示している。

展示会では、Agile Robotsの「Agile ONE」、Hexagonの「AEON」、Unitreeの「H2」プラットフォーム、PaXini、華研机器人、XPeng、LimX Dynamicsなど、中国系企業を中心とした製品展示が目立った。また、Dassault Systèmesによる「Azura」関連デモも注目を集めた。

さらにSchaefflerはヒューマノイドロボット向け技術スタックを展示し、アクチュエータープラットフォームでHermes Awardを受賞したことで、同分野における重要サプライヤーとしての存在感を一段と強めた。

ただし、生産拡大と実導入の間には依然として大きなギャップが存在する。2025年にはヒューマノイドロボットの生産台数が大幅に増加したものの、その約90%は研究開発、学習、データ収集用途であり、本格的な生産現場への導入ではない。

現在、中国が生産および初期導入の両面で主導的立場にある。UnitreeやAgibotなどは2025年の生産台数を5,000台超へ拡大する見通しであり、これは前年比約10倍に相当する。ただし、多くの用途は依然としてPoC(概念実証)段階に留まっており、本格的な商用化には時間を要すると見られる。

当社予測では、実運用導入台数は2025年の約2,500台から、2032年には約20万台、2035年には75万台超へ段階的に拡大する見込みである。

3. 防衛が重要な成長垂直分野に

展示された成功事例の多くは依然として自動車、化学、製薬など伝統産業に集中していたが、一方で防衛関連需要の拡大は、今年のHANNOVER MESSEにおける重要な議論テーマとなった。

特に欧州では、防衛関連投資がオートメーション、エレクトロニクス、データセンター関連インフラへ波及していることが確認された。

複数のセッションでは、サプライヤー各社が航空宇宙、エレクトロニクス、重工業など、防衛関連産業からの需要増加について言及していた。また、「レジリエンス」「主権」「安全保障インフラ」といったキーワードも頻繁に登場した。

当社予測でも、航空宇宙・防衛分野は2030年までに市場規模がほぼ倍増する見通しであり、今後の重要成長ドライバーとして位置付けられる。

展示会メモ|HANNOVER MESSE 2026で見えた主要テーマ

注:航空宇宙・防衛分野は、全体の工業生産を大きく上回る成長を示しており、2030年までに市場規模はほぼ倍増すると予測される。今後の産業オートメーション市場における重要な成長ドライバーとしての存在感が一段と高まっている。

4. ソフトウェア定義オートメーションは勢いを増すが、最終形はまだ不明確

オープン型かつソフトウェア定義型のオートメーションは着実に勢いを増しており、制御機能はハードウェアからソフトウェアレイヤーへ移行しつつある。

Siemensは、仮想PLC、エッジ制御、ソフトウェアオーケストレーションの進展を展示した。また、多くの議論では、柔軟性、モジュール化、ベンダーロックイン回避が重要要件として挙げられていた。

ただし、将来的なアーキテクチャの方向性については依然として議論が続いている。少なくとも予見可能な将来においては、ハードウェア中心の世界とソフトウェア中心の世界が共存し、相互補完的に発展していく可能性が高い。

5. IT/OT融合はなお業界の中心テーマ

IT/OT融合は今年も展示会全体を通じて強い存在感を示していた。企業各社は、エンタープライズシステムと現場運用システムを統合しようとしている。SiemensやElisa Industriqの展示では、実行系ソフトウェアと設計系ソフトウェアを統合環境へ集約する取り組みが強調されていた。また、データ駆動型製造プラットフォームやサプライチェーン・コントロールタワーの展示からも、計画と実行をリアルタイムで接続する方向性が明確に示されていた。IT/OT融合は、もはや概念的なビジョンではなく、具体的な実装フェーズへ進みつつある。

6. 新設プロジェクト投資はますます限定的に

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注:世界の新工場建設は依然として低調かつ変動性が高く、活動水準は2023年を下回っている。2030年に向けても回復は緩やかに留まる見込みである。

当社がオートメーションサプライヤー各社へヒアリングした結果、多くのメーカーが現在重視しているのは、新規設備投資ではなく、既存設備におけるOEE(総合設備効率)の改善と生産性向上であった。

その結果、ブラウンフィールド最適化が事実上の標準投資戦略となりつつある。

HANNOVER MESSEでも、多くの展示がデジタルツインや高度計画技術を活用した既存工場最適化に集中しており、大規模グリーンフィールド案件の事例は限定的であった。

当社データによれば、世界の新工場指数は2023年の約129をピークに、2027年には約78まで低下する見込みであり、グリーンフィールド投資の構造的減速を裏付けている。

結論

今後、ヒューマノイドロボットの初期商用導入は、高度に構造化された環境を中心に進展すると見られる。一方で、産業投資全体は航空宇宙および防衛関連需要の影響を一段と強く受ける可能性が高い。

2027年のHANNOVER MESSEでは、実運用ベースのユースケースがさらに増加し、ROIの可視化が進むとともに、ブラウンフィールド最適化が引き続き主要テーマとなると予想される。また、防衛需要が産業オートメーション市場へ与える影響も、さらに拡大する見通しである。

当社の調査がどのようにお役に立てるか?

産業オートメーション市場は急速に進化している。当社の調査は、将来の市場トレンドを形成する重要な変化を把握し、戦略立案へ反映するための支援を提供する。

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