世界の低圧インバータ市場は2030年に170億米ドル超へ

Interact Analysis

28 May 2026

レネー・ジュ(Renee Ju)

リサーチ・アシスタント

レネーはリチウム電池および水素エネルギー分野の研究に注力し、商用車チームのデータベース構築を支援するとともに、一次・二次情報の調査、データ分析および業界分析を行っている。

Interact Analysisが最新発表した『Global Low Voltage AC Drive Market Report 2026』によると、2025年の世界低圧インバータ市場規模は144億米ドルに達し、前年比4.2%増となった。2030年には市場規模が170億米ドルを超える見通しである。アジア太平洋地域は引き続き最大の地域市場であり、世界市場の約40%を占める。一方、米州地域は今後最も高い成長率を示すと予測されている。

 

EMEA

新興市場が地域成長を牽引

 

2025年の欧州・中東・アフリカ(EMEA)市場規模は43億米ドル近くに達し、前年比4.7%増となった。地域別では最も高い成長率を記録したものの、この成長は主としてユーロ高による影響を受けており、米ドル換算ベースで市場規模が押し上げられた結果である。為替変動の影響を除いた場合、EMEA市場の実質的な成長率は米州およびアジア太平洋地域を下回り、実質成長率は約0.3%にとどまった。

今後、EMEA市場は2025年から2030年にかけて年平均成長率(CAGR)2.5%で成長し、2030年には市場規模が49億米ドル近くに達すると予測される。この成長率はアジア太平洋地域および米州地域を下回る見込みである。

また、ドイツをはじめとする従来の主要市場の成長率は、中東欧の新興市場と比較して大幅に低くなる見通しであり、ポーランドやチェコなどの国々が欧州低圧インバータ市場の重要な成長エンジンとなるとみられる。

その背景として、これらの国々では比較的成熟した製造業基盤を有していることから、既存設備の更新需要が発生しているほか、西欧からの生産移転を受けた新規需要も拡大している点が挙げられる。さらに、近年では多くのアジア企業が中東欧地域を欧州における製造・サプライチェーン拠点構築の重要な足掛かりと位置付けている。これらの要因が相まって、中東欧地域における低圧インバータ需要は今後も継続的な成長が期待される。

 

米州

量・価格の双方が成長を牽引、データセンターが注目分野に

 

2025年の米州低圧インバータ市場規模は37億米ドル近くに達し、前年比4.4%増となった。

その要因として、まず関税政策を巡る不透明感を背景に、需要家による前倒し在庫確保が進み、上半期の市場需要を一時的に押し上げたことが挙げられる。加えて、海事産業やデータセンター分野における高い成長モメンタムが、低圧インバータ需要の拡大を後押しした。

需要回復に加え、製品価格の上昇も2025年の米州市場成長を支える重要な要因となった。関税政策の影響により、一部の主要部品の輸入コストが継続的に上昇しており、メーカー各社はそのコスト増加分を段階的に下流市場へ転嫁している。その結果、低圧インバータ製品の販売価格は上昇傾向にある。また、米国市場向けに輸出される自動化設備の完成品価格も上昇している。

米州の低圧インバータ市場は、2025年から2030年にかけて年平均成長率(CAGR)4.5%で成長し、2030年には市場規模が46億米ドル近くに達すると予測される。これは予測期間中において最も高い成長率を示す地域市場となる見通しである。

なかでも、データセンター分野は今後の成長を牽引する注目市場の一つである。AI関連の計算需要が継続的に拡大するなか、データセンターでは空調設備(HVAC)や冷却システムへの投資が増加しており、それに伴い低圧インバータの需要も拡大している。

(関連記事:「低高調波インバータ:需要拡大が続き、データセンターが重点アプリケーションに」)

 

アジア太平洋

市場全体は堅調に推移、中国市場ではブランド間の明暗が鮮明化

 

2025年のアジア太平洋地域における低圧インバータ市場規模は64億米ドルに達し、前年比3.8%増となった。2025年には円高が進行し、米ドル換算ベースの市場規模を一定程度押し上げた。また、インドおよび東南アジア市場が高い成長率を維持したことに加え、中国市場における需要回復も進んだことで、アジア太平洋市場全体は堅調な成長を実現した。今後も市場拡大が続き、2030年には市場規模が76億米ドル近くに達すると予測される。

中国は世界最大の単一国市場であり、市場では「中国系大手メーカーと外資系メーカーの間で業績格差が拡大する」という傾向が鮮明になっている。この傾向は予測期間中も継続するとみられる。

国産化・輸入代替の流れが進むなか、中国系大手メーカーはコスト競争力に加え、ローカライズされた製品開発やサービス提供能力を強みとして市場シェアを拡大しており、その成長率は業界平均を大きく上回っている。一方、外資系メーカーの中国市場戦略は明確に二極化している。例えば、ABBや三菱電機は、生産能力の拡張や中国市場向けブランドの投入などを通じて、引き続き中国市場への投資を強化している。

これに対し、一部の外資系メーカーは比較的慎重な事業運営方針を採用している。また、価格競争の激化や利益率の低下に対応するため、一部事業の縮小に踏み切る企業も見られる。こうした市場構造の変化を背景に、中国の低圧インバータ市場では、今後も中国系メーカーの存在感が一段と高まる見通しである。

地域別世界低圧ACドライブ市場

結論

 

2025年は、為替変動、サプライチェーン再編、そして地政学的要因が、市場動向を左右する重要な変数となった。同時に、中国メーカーのグローバル展開は引き続き加速しており、中国系ブランドと国際ブランドの競争構造も変化を続けている。今後を展望すると、一方では、省エネルギー化および生産性向上に対する需要が市場成長を支えるとみられる。データセンター、半導体、高度製造業といった分野における新規需要の拡大は、中・高機能製品の市場浸透率向上を継続的に後押しする見通しである。他方で、世界的な製造業の地域分散化が進展するなか、メーカー各社にはサプライチェーン構築力、供給・納入能力、さらには地域サービス体制への長期的な投資が一層求められることになる。こうした環境変化を背景に、企業間競争の焦点は単なる規模拡大から、収益性の向上、業界・用途別市場への深耕、そしてグローバルオペレーションの効率性を含めた総合力の競争へと移行していくと考えられる。

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