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2030年には、ヨーロッパでは4万5000台以上の大型トラックが水素で走行

Commercial Vehicles

4 September 2023

Marco Wang

マルコ・ワン(Marco Wang)

リサーチアナリスト

マルコは商用車部門のリサーチディレクターを補佐しています。インタラクト・アナリシス入社以前は、彼はドイツで大学院卒業後、投資銀行で主に自動車セクターのクロスボーダーM&Aプロジェクトにおける産業調査を担当しました。水素自動車市場において豊富なリサーチ経験を持っています。

Interact Analysisによって発表された最新の調査によると、2030年には大型トラックが輸送用途における水素の最も一般的なアプリケーションになると予想されます。今後10年間は中国が市場をリードし、ヨーロッパでも急速に普及が進むと予想されます。水素大型トラックの市場は中国に比べればかなり小さいものの、ヨーロッパは他の地域と比べるとかなり先行しています。我々の調査では、2030年までに累計4万5000台の大型水素トラックがヨーロッパで導入される予想です。

2030年までに45,000台の大型水素トラックがヨーロッパに配備される予定

電動化が難しい大型トラックを脱炭素化するメリットが、水素を商用輸送分野において実行可能な燃料にするのです。しかしながら、高いライフタイムコストと限られた水素の供給力(特にグリーン水素)が、依然として課題となります。ヨーロッパの大型商用車市場における新たな水素ソリューションは政府のインセンティブに依存しており、運行している水素商用車の大部分を都市バスが占め、またトラックの成長スピードも遅いです。

ゴミ収集車が水素車の導入を推進

ヨーロッパではごみ収集車から開始され、トラックでの燃料電池技術の実証が行われています。Interact Analysis によると、現在ヨーロッパで走行している水素の中型および大型トラックの約25%は、都市のごみ収集に使用されています。EUが資金提供を行っている実証プロジェクトが、導入を後押ししています:

  • REVIVE プロジェクトは、燃料電池パワートレインを15台のごみ収集車に搭載し、ヨーロッパの8つのサイトに展開することを目指しています。このプロジェクトはEUから資金提供を受け、2024年まで行われます。導入された車両のほとんどは、少なくとも5年は稼働する予定です。
  • HECTOR プロジェクトは、7つのパイロット都市に水素燃料電池を搭載したゴミ収集車を7台配備し、テストを行う予定です。2019年に開始され2020年に最初の車両がドイツに納車されたこの計画に、EUは560万ユーロの資金を提供しています。

ドイツでは、政府が2017年から2021年の間に3億5,400万ユーロを投資して水素と燃料電池の市場活性化の支援しており、そのうちの30%は、146台の燃料電池ごみ収集車と22台の路面清掃車を購入するプロジェクトに投資されました。興味深いことに、中国でも現在、多くの水素トラックが路面清掃やごみ収集に使用されています。公共分野は、この新興ではあるがコストのかかる技術をより受け入れているように見受けられ、これは予算上の懸念とポジティブな宣伝のバランスがとれている地方自治体によって推進されているものと思われます。

Hyundaiのヨーロッパでの燃料電池トラック展開の成功 

ヨーロッパのOEMよりも先に、Hyundaiによってヨーロッパにおける燃料電池大型トラックの最初の大きな商業的ステップが踏み出されました。スイスにおける野心的な計画の第一段階として、Hyundaiは2020年にヨーロッパ初の商業用燃料電池トラックを納車しました。2021年までに、Hyundaiの活動により水素トラックとしては今までで最多となる約50台のトラックを納車しました。この数は、韓国で運用されている水素トラックの数よりも多くなります。2021年末時点で、韓国で納車された水素トラックは5台のみになります。

Hyundaiのヨーロッパでの水素トラック戦略のスコープは拡大しています。Hyundaiの燃料電池トラックフリートの次の市場は、ドイツになります。これらのトラックは、ドイツのロジスティクス、製造、そして小売企業によって運用される予定です。このプロジェクトはドイツからの資金提供を受け、2022年末に第一段階用のトラックが顧客先に届きました。Mitea GmbH が水素トラックを運用する最初の顧客となります。

Hyundaiのトラックに加え、北と西ヨーロッパでは食品や商品の配送用に、地元のOEMが供給する数台の燃料電池トラックの実証実験が行われています(Hyundaiのトラックも消費財を配送するために、スーパーマーケットやロジスティクス企業に納車されています)。小売店向けのロジスティクスサービスも、水素大型トラックがテストされるシナリオの一つであることを示しています。これらのトライアルの背後にある動機には、オペレーターまたは顧客が低炭素な貨物輸送を望んでいるか、またはバッテリー式電気トラックがオペレーションのニーズを十分に満たすことができない、という類似点があります。例えば、一部の水素トラックは、冬は気温がとても低くなるスイスの標高の高い山岳地帯で運用されています。水素燃料電池システムの性能はこれらの条件下でも低下しないことが示されていますが、電気自動車では低温における性能の低下が最大の懸念事項になる可能性があります。

インフラが成功を左右し、パートナーシップがスケールロールアウトを開始する

トラックのロールアウトがスケールアップされる際に、水素燃料補給ステーションが設置されていることは非常に重要です。都市バスに比べ、貨物輸送のルートはそれほど固定されておらず、特定のビジネス要件によって決定されます。燃料補給ネットワークが広範囲で利用可能になるまでは、燃料電池トラック市場が商業的な勢いを得ることは困難です。燃料消費が多い車両にとって、水素のコストはまた別の問題になります。ヨーロッパ政府は環境保護上のメリットとして低炭素水素をターゲットとしていますが、グレー水素が今日において最も手頃なソリューションになります。

ヨーロッパにおける水素ステーションの数は、2021年末には中国とほぼ同じ数になりましたが、ほぼ半数はドイツにあります。さらに重要な点として、ヨーロッパの多くの水素ステーションは大型商用車では使用できないのに対し、中国ではほとんどすべてのステーションがトラックやバスに燃料を補給するために設計されています。近年、中国は多額の投資によりインフラ建設のペースを加速させました。しかし、ヨーロッパではインフラの拡大が遅いです。

近年、中国は水素燃料補給のためのインフラ構築のペースを大幅に加速している

規模を拡大するために、市場での展開には複数グループの協力が必要になります。市場展開は、単に車両を売るだけではありません。燃料補給インフラ、財源、手頃な価格の水素も広く利用可能である必要があります。実際に、ヨーロッパで進行中の立ち上げプロジェクトは通常、インフラ、車両、オペレーター、そして政府といったバリューチェーン全体の幅広いパートナーシップに基づいて行われます。

  • EUからの1,200万ユーロの資金を活用し、15社のサプライヤーがH2Haulプロジェクトで提携し、ドイツ、ベルギー、フランス、スイスにおいて16台の大型燃料電池トラックの実証を目指します。
  • HyTrucksプログラムの一環として、エネルギーサプライヤーは政府機関と提携してコンソーシアムに参加し、2025年までにベルギーで300台の燃料電池トラックを目標としています。
  • オーストリア企業11社のコンソーシアムであるH2 Mobility Austria は、2030年までに2,000台の燃料電池トラックを目標として設定しました。政府の支援を確保することが、短期的な最優先事項になります。

H2 Truckプロジェクトでは、バリューチェーン全体で20以上のパートナーがノルウェーで100台以上の燃料電池トラックと関連インフラの導入を目指しています。

水素トラックは今後10年以内における政府のビジョンの一部

EUは、水素をカーボンフリーエネルギーシステムへの移行のための、前途有望な道筋と見なしています。輸送分野における欧州各国当局が発表した多くの水素戦略やロードマップでは、ゼロエミッショントラックのために、燃料電池技術の活用をターゲットにしています。

  • オランダ: The National Climate Agreementにおいて、2025年までに燃料電池大型車3,000台を含む、水素に関する野心的な目標を定めました。
  • ドイツ: ドイツの人口最多の州であり、現段階で水素ステーションが最も多いNRW州では、2030年までに20トン超の燃料電池トラックを1万1,000台という目標を設定しています。ドイツは国家戦略の一環として、水素に関する体系的な投資と行動計画を作成しました。
  • スペイン: スペインの水素ロードマップでは、2030年までに5,000台以上の燃料電池トラックを目標としています。
  • チェコ: チェコ共和国の水素戦略では、2030年までに4,000台の水素トラックを含む、輸送における将来の水素消費の予測を掲載しています。
  • イタリア: イタリアの「水素国家戦略予備ガイドライン」に含まれている予測によると、2030年までに大型長距離トラックの2%は、水素燃料電池を動力源とします。

水素トラックはまだスタートラインを待っている状況ですが、低炭素水素の供給、水素のインフラ、そして大型輸送の脱炭素化に対するヨーロッパ当局のコミットメントは、業界に前向きな見通しを与えます。政府機関による計画とそれに対応する資金援助は、投資を確保するための確かなる保証を与えます。水素インフラの建設は既に始まっています。電解槽プロジェクトの増加や水素輸入に関する国際協定は、近い将来に低炭素水素の供給力を向上させ、燃料電池電気自動車のコストを低減させるでしょう。

弊社の「輸送用途における水素」のレポートの詳細については、こちらからパンフレットをダウンロードしてください。

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